物心がついた頃から魚が好きで、ダイビングは大学で初めて経験しました
私は物心がついた頃から魚が好きで、毎日釣りをして釣ってきた魚を家で飼っては、水槽のことを考えていました。当時の日記も魚のことばかり書いて先生に注意されたりしました。
ダイビングは小さい頃にテレビで見た「野生の王国」がきっかけでずっとやりたいと思っており、大学に進んだ時にはじめにしたことはダイビングのCカードを取得することでした。高知大学当時のダイビングはワイルドで、ライセンスを取ってすぐにタンクを借り、友人と2人誰もいない海でBCに空気を入れてビート板のようにして水面を移動し、ポイントに着いたら浮具にしていたBCを着用して潜って遊んでいました。
大学に入りようやく出来たダイビングでしたが、大学にはダイビング部がなかったため、ワンゲル部に入りずっと登山をしていました。ヒマラヤの標高5,545mのカラパタールやエベレストベースキャンプまで行った経験もあります。
小さい頃に飼っていた魚との約束を果たすために南米に行きます
ワンゲル部で山に登ることが多かったのですが、魚はずっと好きだったので研究者か魚に関する会社に就職をしたい、と大学では水族環境学科で勉強をしていました。海を綺麗にするために環境学を学びたいと学部に入ったのですが、理想と現実のギャップを感じてしまいます。バクテリアと珪藻を同じ試験管に入れ、それらが増えるのを毎日顕微鏡で数えるのですが、ある日顕微鏡を覗くのが嫌になり「私は研究者にはなれないな」と思いました。
しかし私は小さい頃に交わした魚との約束がありました。お小遣いを貯めて買った「アロワナ」という魚が死んでしまった時にあまりに悲しくて「お前をアマゾンに返してやる!」とその魚を食べました。そのアロワナの入った身体でアマゾンに行くのが魚との約束だったので、大学を卒業後就職せずブラジルに向かいます。
ダイビング雑誌を見ているうちにダイビングの仕事がしたくなり30歳で家族と沖縄に移住しました
小さい頃に結んだ魚との約束を果たすためにブラジルに向かい、そのまま一年ほど南米を放浪しました。その後日本に帰国すると親が用意した就職情報が山積みで、当時の「日本水産株式会社(現、株式会社ニッスイ)」に就職します。本当は南米に行って鮭の養殖などをしたいと狙っていたのですが、5年間東京支店で働くことになります。
この時期にまたダイビングにハマり、週末に東京から伊豆まで行くとすごく心が晴れやかになっていたのを覚えています。長期の休みを利用して伊豆だけではなく海外にも行き、ダイビングに時間を費やしました。
ある時、ダイビング雑誌を見ている時にどうしてもダイビングの仕事をしてみたくなります。妻に「沖縄に行ってダイビングの仕事しない?」と言ったところ「いいよ」と答えてくれたので30歳の時に家族で沖縄に移住しました。
「ベントス」のように社会の底辺を這っているのが良いなと思ったのでショップ名を名付けました
沖縄に移住後、出店場所に選んだのは恩納村でした。当時は周辺にダイビングショップは少なく、瀬良垣漁港には私と船長の海人さんしかいない状態でしたので、その海人さんと一緒にポイントを開拓していました。
ショップ名の「ベントス」の対義語に「プランクトン」があります。その中間は「ネクトン」です。ベントスは水底を這っている生物のこと、ネクトンはイカや魚などの自由に泳ぐ生物、プランクトンは浮遊するという意味があります。サンゴもウミウシも、ウニやナマコもベントスです。
独立する前に、ダイビング雑誌を読んでいたらその中に「プランクトンダイバー」と言われるすごいお金持ちの人たちがクルーザーに乗って豪華なダイビングをしている様子が描かれていました。逆に「ベントスダイバー」と言われる贅沢できない人たちがタンクをバディと半分ずつ吸ったり、ウェットスーツを半分ずつ着たりしていました。それは四コマ漫画だったのですが、底辺にいるのが貧乏くさくて良いなと思ったのが「ベントス」と名付けたきっかけです。
ショップの目の前がダイヤモンドビーチになっており、これ以上ないほどの贅沢を味わえます
恩納村の海は奥深く、地形、マクロ、大物などを楽しむことができ、ポイントまでの距離が近いのでスケジュールの調整が柔軟にできるなど魅力はたくさんあります。しかし何よりも魅力なのは目の前の手軽に行ける海がこれだけの「すごい」で満ちていることだと思います。ドロップオフは一般のダイバーの行ける限界を超えており、これだけ深さがあるということは生物も多様に生息していて飽きることがありません。
また、私はショップの目の前にあるダイヤモンドビーチが大好きです。ショップからタンクを背負ってビーチまで歩き、潜って、またショップに戻ってきてタンクを背負ったままでもシャワーを浴びることができます。これ以上の贅沢はないですね。お客様には「秘密基地だ」と言われるようなロケーションなので、たくさんの方にこの贅沢を味わっていただきたいです。またビーチを使ったスキンダイビングも人気です。半透明の綺麗なロングフィンがレンタルでき、お店から出て目の前の海にすぐに潜りに行くことができます。
ショップはテクニカルダイビングをやりたい人の駆け込み寺のようになっています
ショップではファンダイビング、体験ダイビング、シュノーケル、ライセンス講習などなんでもできるのですが、少し変わっているのはテクニカルダイビングができることです。まだまだテクニカルダイビングを提供できるショップが少ないため駆け込み寺のようになっています。テクニカルではシングルタンクで潜るよりも安全に、恩納村やエモンズなど40m〜45mの深い海を楽しむことができます。サイドマウントや減圧手順の講習から、講習後のトレーニングまでショップで行うことができ、身につけたスキルを忘れないよう継続してトレーニングを続けられるような価格帯で提供しております。
テクニカルダイビングをやることで普通のダイビングもより安全にしたい
お客様に安全に潜っていただくことはダイビングをやる上での第一条件です。少人数制でご案内し、無理に潜るようなことはありません。そのうえでより過酷な環境で潜るテクニカルダイビングの知識は普通のダイビングをより安全にすることができると考えています。例えば、ダイブプランをガスの消費量にもとずいて計画することや、流れの強いところでは機能しない船から下げる緊急減圧用タンクの代わりに緊急用のステージタンクを持ってガイドすることなど、私がこれまでに学んだテクニカルの経験は一般のダイビングの安全に役立てていきたいと思っています。
生物に危害を加えないための中性浮力とフィンワークのコースを提供しています
恩納村はサンゴの村宣言をしており、環境に優しいダイビングのガイドライン「グリーンフィンズ」を導入しています。ベントスダイバーズでも「生き物に対して危害を加えない」ことを安全の次に重視しています。環境に優しい中性浮力とフィンワークのコースも提供しています。サンゴを壊さない、砂を巻き上げない、というのをみな「やっているよ」と言いますが、実際にはサンゴに近寄りすぎる、サンゴにゲージを引っ掛ける、生物を触って遊ぶ、岩をひっくり返してそのままほったらかしにする、など様々な問題があります。コースではまずは器材を整えてから砂を巻き上げない綺麗な中性浮力を取得してもらい、フィンワークも色々な形を教えています。せっかく「海が好き」と言っているダイバーが環境を壊してしまわないように、お手伝いができれば嬉しいです。
ダイビングでは、魚たちの捕食や求愛など、命を精一杯生きているのが目の前で見ることができます。以前、アフリカに行ったことがあるのですが、野生の動物は動物園の動物に比べて躍動感があって本当に美しいと思いました。水中世界は「野生の王国」にすぐに行くことができる素晴らしい手段です。大自然の中を命がけで生きている生き物たちは本当に美しいと思います。レアものを追いかけて写真だけ撮るのではなく、目の前のたくさんの生物をゆっくり観察して見てください。きっと新しい発見があると思います。